結婚願望のない男 Vol.12

親友の婚約を、どうしても喜べない。狂気に陥った女が破壊した、一番大切なもの

私の大好きな彼氏には、結婚願望がない。

それを知ったのは、30歳の誕生日。順調な交際を2年も過ごした後だった。

東大卒のイケメン弁護士・吾郎との「結婚」というゴールを、疑うことのなかった英里。彼が結婚願望ゼロと知った日から、不安と焦りが爆発。占いに行き友人にもアドバイスを求めるが、吾郎は「結婚は嫌だ」の一点張り。

そんなときに出会った、結婚願望のある男・きんちゃん。英里は二人を両天秤にかけることを試みたが、あっさりと吾郎にバレ、また大喧嘩に。落ち込む英里に追い打ちをかけたのは、親友の【ご報告】だった。


「突然だけど、来月結婚することになったの」

咲子の衝撃の【ご報告】が頭の中で何度もこだまし、英里は目の前が真っ暗になる。

萌の妊娠に加えて、咲子の結婚。

最近の女子会の話題は、いつも英里と吾郎のイザコザがメインで、二人の近況はほとんど聞いていなかった。

英里が進展のない話をウダウダと愚痴る間に、二人は二歩も三歩も先へ、人生の駒を進めていたということだ。

「英里......?だ、大丈夫......?」

ふと我に返ると、二人の親友が、気まずそうに自分を見つめている。

ここは無理矢理にでも笑顔を作り、「おめでとう!」と歓声を上げるべき正念場だ。いつも自分を励ましてくれる女友達のおめでたい報告を、祝えない女になんてなりたくない。

「お、おめ...で......」

必死に「おめでとう」を言い終えようとしたとき、二人の女の瞳の奥に、憐みの感情が見て取れた。

声は途中でかすれて消え、その代わりに、英里の目には不本意にも涙が滲み、顔が歪んでしまう。

「ご......ごめん、急に具合が悪くなっちゃった......。先に帰る......!」

それだけ言って一万円札をテーブルに置き、席を立つので精一杯だった。足早に立ち去る英里の背中に向かって、咲子が何か言った気がする。

―英里、待って!ごめん!!!―

それが謝罪の言葉に聞こえたのは、空耳だと思いたかった。

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