結婚できない女 Vol.3

結婚できない女:港区スタンダードで店を予算別に提案。知りすぎた女が選ぶべき男は...

熾烈を極める東京婚活市場。

その中で「結婚したいのに結婚できない」と嘆く女には、いくつかの共通点がある。

ある行動により自分の市場価値を無駄に下げる女、逆に実態なく価値を上げ過ぎて機会損失している女……。

具体的に、24時の誘いに乗る女・亜季、都合のいい女・里子の事例を紹介してきたが、今回登場するのは、港区に生息する「提案してしまう女」。


提案してしまう女


「敦子さん、今度焼肉にでもいきませんか?」

そう声をかけてきたのは、百貨店の広報担当、滝本という男。

広告代理店に勤める敦子と、今しがたプロモーション会議を終え、エレベーターホールまで歩いていく途中のことだった。

以前から滝本が、少なからず自分に好意を持っていることを、敦子はなんとなく肌で感じていた。敦子もまんざらでもないし、さりげない誘い方も爽やかでポイントは高い。

エレベーターの下りボタンを押しながら、敦子は笑顔で滝本を振り返り、上機嫌でこう言った。

「いいわね。焼肉だったら…赤坂の『かぶん』か、西麻布の『よろにく』か。もう少し予算下げるなら、同じく西麻布の『十々』とか?」

「……。」

一瞬凍りついた空気に、さすがの敦子も気づく。

目の前に立つ男から、数秒前まで少なからず放たれていたはずの熱が一気に冷めていく。その様を、敦子はスローモーションのように見つめながら、猛烈な後悔に襲われた。

時間を巻き戻したいが、もう遅い。一度口から出てしまった言葉を取り消すことはできないのだ。

―ああ、またやってしまった…。

小坂敦子、大手広告代理店勤務。仕事と遊びに全力投球して生きてきたら、あっという間に33歳になっていた。30歳を過ぎたら、ぴたりと風が止むように出会いがなくなり、現在彼氏いない歴1年10か月、順調に記録を更新中。

「…さすが敦子さん。美味しいお店たくさん知ってますね。」

別れ際、滝本は渇いた笑顔を敦子に向けたが、彼から誘いの連絡はないだろうことは、敦子にもわかった。

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